04.Crazy World
「ギシャア!」
悲しみの後に憎しみに包まれ、そしてそれは狂気に変わる。
―忌々しいアンセクトめ。
「……死ね」
お前らのせいで全て崩れてしまったんだから。全部、全部、全部。
だから、その罪を背負って、死んでくれるかなぁ!!!
アッシュとエニスは武器を構え、目の前の敵に向かった。
湧き上がる憎悪と、敵を葬ることの快感に震え、更に口角が上がってきた。
アンセクトの鎌がこちらに向かってくるのを避け、アッシュは斬り付ける。
「アッシュ!後ろ!!!」
くるりと振り向き敵を切り裂く。
その衝撃で相手が怯んだ隙に急所を狙う。
「でかい図体なんかしてるから遅いんだよ」
完全に動かなくなるまで更に深く斬り付け、切り刻み、奴は死んだ。
斬り付ける度に、奴らからはあの日と同じように赤い液体が僕に降り注いできた。
……あぁ、なんて穢らわしい。
しかし1匹仕留めたところで収まるわけがなく、次々と奴らはやって来る。
全く。なんて狂っている世界なんだ。
僕たちが何をしたっていうんだ…。
僕が駆除しないと、また誰かが犠牲になってしまう。
その前に奴らを全滅させて、王を殺さなくては…。
あの悲劇が起こってから数週間のこと。
世界にはアンセクトたちが増え続けている。
エニスの父親の書庫に病気のことが書いてある本はあった。
分かったことは、奴らの出現時期と病気の蔓延時期が大体同じということ。
奴らはリーダー、すなわち王の統率により動いているということ。
これから病気との関連性について詳しく研究を始める、というところでその文章は終わっていた。
大したことはわからなかったが、結局のところ、奴らを全滅させるのがいいのではないかということになった。はは、我ながら単純だ。
それから僕とエニスは村を出て、アンセクトたちの王を探している。
奴らをたどっていけばきっとたどり着くはずと信じて…
そして道中に出てきた奴らは、みんな殺してやるんだ。
斬り付けて、切り裂いて、切り刻んで、赤く、紅く、アカク……
「アッシュ、大丈夫?」
「…あ、あぁ。大丈夫だ。考え事をしていただけ」
「そっか」
危ない、また思考の制御ができなくなった。
落ち着かないと…。
その様子を見たエニスが、思案気な顔をしてからこちらをまっすぐ見つめてきた。
「アッシュ、あのね。今は辛いだろうけど、きっとこの先の未来は明るいはずよ。
だから、その、えっと…。無理…しないでね。私、ずっとついてるから」
エニスがまっすぐな瞳で見つめてくる。
エニスは自分も辛いだろうに僕の心配をしてくれる。
―支えられている。そう思っただけで心が落ち着いた。
「わかった。ありがとう」
早く元の平和な世界に戻さなくては。
エニスのために、みんなのために。
この狂った世界を壊さなくては…。
……でも、本当に狂い始めてしまったのは世界じゃなくて、
僕なのかもね。