Party1.レオニス
「ここも壊滅的だな…。もう草だらけだ」
「誰か…誰か一人でも無事な人はいないかしら」
隣村に着くと、そこもすでにアンセクトたちに喰われた後だった。
…間に合わなかったか。
そう思い、アッシュはさっさと次の村へ行こうとした。が、
「あっ!」
エニスが何かを感じ取ったらしく走り出した。
…なんだ?
エニスを追いかけたどり着いた先には、立ち尽くしているエニスと良い服を着た1人の青年がいた。
「生存者か。よかったな。…ん?」
歩を進めてエニスの横に立つと、そこにはもう1人、いや、2人の少女もいた。
「あぁ!!助けが来た!!これはありがたい!!もうこれで大丈夫だよ!! 私たち2人は救われたんだ!!あぁぁ神様ありがとうございます!!!」
1人の少女を抱きかかえ、オーバーなアクションで喜んでいる青年。
それから青年の後ろに倒れている少女。切り傷から見ておそらく、アンセクトに殺られたんだろう。
…ん?これは…この状況は…何か違和感を感じる。
エニスの方を向くと首を振られた。
「私たちはツイているよ!! 見たところ怪我も大してしていないみたいだし、君たちは強いみたいだね。 紹介が遅れたが、私の名前はレオニス。ここの村の住人だ。いや、だった、と言うべきかな? あははっ!あんまり笑えないね! でも私と妹の2人、運よく生き残れたから本当に良かった!! あ、それで提案なんだけれど、私たちは少しなら魔力があるんだ。 あまり力になれないとは思うんだけど、君たちがこの村をこんなにしたアンセクトたちを倒す旅をしているのなら、 私たちも連れて行ってくれないだろうか?いや、何と言われてもついて行かせてもらうよ!! さぁ!いざ共に行かん!かわいいかわいい我が妹よ!!!!」
……呆気にとられた。
舞台俳優のような話し方でマシンガントークを披露したこの男。
そして何より、妹と呼ばれたソレ。
誰がどう見ても…
「…人形、だろう?」
一瞬、時間が止まった。
「は?君は何を言っているんだい??」
レオニスが、先ほどまでの態度とはうって変わって、鋭い殺気を向けてきた。
が、次の瞬間…
「あー、成程!私の妹が人形のようにかわいいということだね!!そうかそうか! でも駄目だよ?妹は恥ずかしがり屋だからあまり喋らないし、将来の伴侶は私みたいな人がいいと思うんだ! でもま、私みたいな完璧な人間はいるかわからないけどね!あははは!!ジョークだよ!!」
レオニス、と名乗った青年の腕の中にいる少女は人形。
そして、その後ろに倒れている少女。
レオニスは一切見向きもしない。
が、彼女の腕に付けられたブレスレットは、その男がしているものと同じだった。
「あぁ人形といえば、この騒動の間に妹の人形をなくしてしまったんだが…。 いやはや、こればかりは兄として失格だな。すまない。また気に入ったのがあれば購入するとしような」
そう、レオニスは人形に話しかけていた。
「アッシュ、もしかしてこの人…」
「あぁ、人形を死んだ妹だと思い込んでる」
「ん?何か言ったかな??」
相も変わらず、レオニスはにこにこしている。
「アッシュ、ここは話を合わせておきましょう…。この人にはそれが救いなのだと思うから…」
人の気持ちに敏感なエニスが言うんだから、きっとそうなのだろう。
それに、人手は多いに越したことはない。
「…わかった。おい、レオニスといったな。一緒に行こう」
「あぁ!妹共々、よろしく頼むよ!!ところでこの旅はどこへ向かっているんだい? 何せ私たちはこの村から出たことがあまりないのでね!あぁでも本はたくさん読んだから知識はあるぞ!!それに妹は……」
…もしかしなくても、このマシンガントークはずっと続くのか。
はぁ、とため息をついたら、久し振りにエニスが笑った。
「ふふふっ。賑やかになりそうね」