06.Secret Voice
「はぁ…、はぁ…、ついた…!」
行く手を阻むアンセクトの壁をなぎ払い、塔の最上階へ辿り着いた。
「エニスッ!何処だ!居るなら返事をしてくれ!」
息を弾ませながら叫ぶが返事が無い。
どうか…神様…!
「エニ…ッ!?うわっなんだ!?」
足元が揺れ、轟々と地鳴りが響き渡り大地が震える。
その地鳴りは段々と大きくなってくる。
「何かが…近付いてくる…!」
それは空から塔へ降り立った。
降り立つと同時に、凄まじい衝撃で轟音が辺りを包んだ。
その振動で塔全体が揺れ、アッシュも倒れそうになる。
……でかい。
今までのアンセクトとは違うのは一目瞭然だ。
あれがアンセクトの王…。
奴さえ倒せば…。もう僕一人でやるしかない…!!
アッシュは身構えた。
― とうとう来たカ ―
「っ?!」
― オ前は、間違ってイル ―
「誰だ!?」
誰かが話しかけて来た。
― 今、オ前の目の前にイル ―
「アンセクト!?エニスを何処へやった!」
― フフッ、オ前はまだ分からぬか…やはり人間は愚かなままダ ―
「煩いッ!お前達のせいで世界は狂ったんだ!」
剣を奴に向ける。
エニスはここにいるはずなんだ。こいつを倒せば…!!
― ……いいだろう。悲劇を繰り返さない為ニ、ここで終わりにしてやろう ―
「いいからエニスを返せッ!!」
向かってくるアンセクトの懐へ飛び込む。
しかし、斬りつけたがびくともしない。
……明らかに強い!!
― ふっ。コノ程度か ―
敵がアッシュを吹っ飛ばす。
「煩い!!クソッ!死ね!!!」
何度も何度も立ち上がり、何度も何度も斬りつける。
しかし、王はびくともしない。
…このままじゃ拉致があかない。
― オ前はこの世界がなぜ存在するカ知っているのか? ―
突然、王が話しかけてきた。
「戦っているときに何だ!!」
― 昔の伝承ぐらいは知ってイルだろう。この地は人々の争いによって荒廃したというアレだ ―
その隙にアッシュが攻撃を仕掛ける。
しかし、その攻撃は軽くあしらわれ、アンセクトの王はなおも続ける。
― だが、ソノ伝承には続きがあってナ…。天から奴らが現れたノだ。
「荒廃したこの箱庭を再生すべく、草木となり礎とす。我は創造主の使い。楽園を求む者なり…」
と言ってイた ―
アッシュもまた、攻撃の手を休めない。
(くっ!!話してかけてくるヤツにさえも、僕は太刀打ちできないのかっ…!!)
― 天使ダと思ったのだ。彼らは人々に光ヲ降り注ぎ始めた。
それはとてもこの世のモノとは思えなイほど美しク、何カ良いことが起きルと思った。
しかし、ソレを機に身体から植物が生えルという奇病が発生し、人々は次々死んでいっタ。―
― ……ヤツは狂気ニ満ちタ白い死神だったノだ ―
「ヤツ、だと…?お前たちが奇病の元凶じゃないのか?!」
― そうダ。あれは我々の所為ではナイ ―
初めてアッシュは耳を傾けた。
― 『奴らの思い通りになんてさせない、私たちは自らの意思で生きるのだ!』
死ぬ直前ニ残った“世界の再生を阻止する”とイう思念で皆、動いていタ ―
「世界の…再生?阻止?」
なんのことだかさっぱりだった。
―この世界を悲劇ノ輪廻へ導くのなら、その前ニその芽である病魔に侵されタ人間を消すしかナイ… ―
「何を…言って…」
― オ前はダレニ導かれて来たんだ? ―
しっかりとアッシュを見据え、王が問う。
誰に…?
そんなの僕が決めたに決まって……
断言しようとしたその時、心が揺らいだ。
そんな…まさか…。
僕ではなく…“ダレカ”に決められた…?
……それって…。
― 本当は分かってイルのではないか? ―
「ッ!!」
― オ前が言えないのナら私が言おう。オ前の…世界の本当の敵はッ!?……ヴッ!! ―
「少し、お喋りが過ぎてしまいましたね。ダメじゃないですか。おしゃべりは嫌われてしまいますよ?………あれ?死んでしまいましたか?」
そこにはアンセクトの心臓を貫いたエニスが立っていた。